このウェブサイトは、赤ちゃんスッポンの成長記録を記したものです。赤ちゃんスッポンといってもその由来は2通りあって、1つは卵から生まれた7匹のスッポンです。2つ目は稲作の中干しの時期や稲作シーズンが終わって水がなくなった用水路で行き場を失った赤ちゃんスッポンです。

エピソード1:10個の卵から生まれた7匹のスッポンの飼育

2018年の盆に帰省した時、弟が獲ってきていたスッポンが卵を持っていました。10個入っていました。このままなら煮られてしまうと思い、孵してみたいと思いました。そこで卵10個(割れて凹んだもの1個を含む)を譲り受けて、AirMac Extremeの上で30℃ぐらいでずっと継続して温めて、時々霧吹きで湿度を保ちながら孵化を待ちました。でも、正直、本当に孵化するとは思っていませんでした。卵の上部に極が出現したのは10個全部でしたが、割れて凹んだ卵と、途中から黄色っぽくなってきた卵は孵りませんでした。

ダイソーで揃えた百均製品(ガラス水盤、バーミキュライト、霧吹き、温度計、昆虫用飼育容器、レンジ用角型ガラス容器、人工芝など)を用いて無線LANルーター AirMac Extremeの上で孵卵器の代わりになるものを組み立てました。その方法と過程はこちら →

毎日、温度をチェックしながら霧吹きで卵のまわりのバーミキュライトに湿度を与えました。

46日後、日なたで温度が35℃まで上がっていて、まずいと思いました。でも、結果的にこれが刺激になったのでしょうか。次の日の未明に7匹が殻を破って出てくるとは・・・

47日後、未明に殻から出てきていました。朝起きてびっくり仰天し、妻を叩き起こしました。

その後、試行錯誤しながら飼育が始まりました。
4日後の腹甲の写真と51日後の背甲の写真はこちら →
へその緒が何日ぐらいで消えるかについての検討結果はこちら →
日齢51日の時点における物理的特徴のまとめはこちら →

数日後、1匹がベランダで一晩過ごすことになってしまいました。翌日の朝にいないことに気付き、慌てて室内を探しましたがいませんでした。もうこれはベランダしかないと思いました。前の日の夕方に容器の掃除をしている時に、オーナメントのブロックの穴に入っていたまま、私が気付かずにベランダに干したためではないかと思いました。その考察は当たっていて、室外機の下で発見して事なきを得ました。これにより「ベランダちゃん」と命名しました。最初にそこを見たときは発見できませんでしたが、あとでもう一度そこにふと目を遣ったらちょうど室外機の下から出てきていて見つけることができました。ラッキーでした。無事保護できました。(しかし、ずっとあとでこの子はベランダで不幸がありました)

7匹の名前は、チャレンジャータケちゃんたまちゃんペンタベランダ扁平右手です。

7匹孵化しましたが、実はもう1個の卵の殻の中で1匹ミイラ化していました。7匹が生まれてから26日経ってから割ってみてわかりました。もう少し待ってみれば出てくるかもということだったのですが、7匹が出てきた時にもう1個も割ってやればよかったとすごく後悔しました。結局、実は8匹孵化していたことになります。10個中のあと2個は最初から割れていたり、保温開始から1週間ぐらいで見た目にも育っていないというのはわかっていたので、正常に育っているのは8個だけだと思っていました。実際にその通りでしたが、7匹しか出てきませんでした。1匹は出てくるタイミングを何らかの原因で逸してしまったようです。あるいは破る力がなかったのかもしれません。こちらで気付いてやるべきだった、もう少ししたら出てくるかもしれないとただ待つだけではだめだった、少なくとも車のヘッドライトに照らして中をチェックするなどすべきだったと後悔しました。

2020年5月22日、病気で1匹(たまちゃん)を動物病院に連れて行って抗生物質を処方してもらいました。この時は回復しました。しかし翌年の6月に・・・

2021年6月10日、ベランダでベランダちゃんが事故死。残り6匹になってしまいました。

2021年6月12日、病気(呼吸器感染症)でたまちゃんを動物病院に連れて行って抗生物質を処方してもらいました。しかし、闘病の末、6月27日14:03頃に虹の橋のたもとに行きました。残り5匹になってしまいました。半月も頑張りました。

残りの5匹は2022年7月25日現在、健康に生きています。大きさ順に並べると、ペンタ扁平タケちゃん右手チャレンジャーの順になります。いちばん大きいのが甲長18cm、いちばん小さいのが甲長5.8cmです。大きく差が出てしまいました。いちばん大きい個体の甲長はいちばん小さい個体のそれの3倍です。性別はいちばん大きいのから順に、メス、オス、メス、オス、メス(最後の1匹は性別はまだわからないですがたぶんメス)です。死んだ2匹の性別は不明です。性別を判別するには個体が未熟過ぎたからです。

これら5匹の飼育がスタートでしたが、その後、用水路で発生する行き先を失って生命の危機に瀕している多数の赤ちゃんスッポンがいることに気づき、その保護を始めました。水がなくなった用水路の泥の中から助け出された幸運な3匹の赤ちゃんスッポンについてはこちら →

エピソード2:水がなくなった用水路の泥の中に潜って何とか生き残っていた3匹の赤ちゃんスッポンの保護

稲作シーズンが始まる6月上旬から用水路が堰き止められ、人為的に水位が上げられます。9月下旬まで続きますが、途中、7月下旬から8月上旬にかけて田んぼの中干しのため、用水路の水位が下げられます。これが10月〜5月の農閑期の用水路の状態に近いのですが、この時、用水路の小さい支流では水がなくなって最後の水溜りに小魚が濃縮されます。日照りと酸欠で死んでいく魚が多いのですが、アオサギやコサギやタヌキ、イタチなどによって食べられてしまう魚も多いです。私は水がなくなりかける5日目あたりから完全になくなるまで毎日、朝や夕方に救出作業を行なっています。水を入れたバケツと網を持って出かけて、掬って用水路の本流まで運んでリリースする作業です。できるだけ最後の1匹まで救出します。

そんな中、2022年の中干し期間は小魚だけではなく、思いがけず赤ちゃんスッポンの救出をすることになりました。それは水溜りがあった場所から始まっていた赤ちゃんスッポンの足跡を偶然見つけたことが切っ掛けでした。2022年8月3日の昼前までに魚の救出作業は終わり、そして最後の水溜りも水はなくなり干上がりました。私は昼食のために帰途に就きました。

その日の夕方、いつものウォーキングのため干上がった用水路を通りかかって、ふと底を覗いてみました。すると、泥の上に赤ちゃんスッポンの歩いた跡のようなものがついていました。赤ちゃんスッポンのものとしても1匹ではなく複数いるように見えました。しかし、赤ちゃんスッポンの姿はどこにも見当たらず、足跡は途中で途切れていました。そして昼前までにはなかったタヌキのものと思われる足跡も多数ついていました。私はもう赤ちゃんスッポンは獣か鳥に食べられてしまったのかもしれないと思いました。しかし、よく見ると足跡が途切れているところに小さい穴が空いていることに気づきました。その時、もしかしてここに潜っていることはないだろうかと思いました。しかし、ウォーキング途中なので網も持ってきていません。ちょっと掘り起こすにもそこまで届きません。道具も何もありません。そこで、そこの土手に生えていた背の高い草をひっこ抜いて、茎の根元の方を使って歩いた足跡が途切れている辺りを突くように掘り起こしてみました。すると、泥だらけの小さい塊が現れました。そして動きました。とても小さい1匹の赤ちゃんスッポンでした。ここにいたんだ!とびっくりしたと同時に、よくこの熱中症アラートが出ている日にこんな水のない泥の中で生きていたなと思いました。このまま夜になったら獣に食べられる可能性が高く、運良く襲われなかったとしても翌日の午前中には干からびてしまっていたでしょう。

とりあえず近くの公園に行き、水道で赤ちゃんスッポンを洗いました。まだへその緒(ヨークサックがついていた箇所を便宜的にへその緒と呼ぶことにします)がついていたので、孵化してから0〜3日ぐらいしか経っていないと思われました。こんな生まれたての赤ちゃんスッポンがいきなりこんな災難(水田の中干しによる人災)に遭って、とても気の毒に感じました。急いで連れて帰って水に入れました。5分ぐらい経過し、私自身も少し落ち着いた頃、ふと、まだいるのではないか、助けるには今しかない、もう時間がないと思いました。しかし、すでに18時半近い時間で、日暮れも近く、あまり時間がありませんでした。それでも妻に事情を話してもう一度出かけました。今度は農業用ポールを付けた網を持って行きました。

現場に着いて、赤ちゃんスッポンの足跡がついている箇所の末端を気づいたところは全部掘り起こしてチェックしました。その結果、へその緒がまだある赤ちゃんスッポンがさらに2匹出てきました。しかし、それ以上は見つかりませんでした。もしかしたら先の1匹をあわせたこれら3匹は干上がった泥の中から出てきたけれども、潜ったけど出てこなかった(あるいは出てこれなかった)赤ちゃんスッポンもいたのかもしれません。なぜならば、これらのちゃんスッポンはおそらくこの近くで卵から出てきたと考えられるので、水がなくなってきてこの辺り一帯の水生生物が濃縮された水溜りにたった3匹しかいなかったとは考えにくいからです。しかし、足跡を辿って赤ちゃんスッポンに到達する方法だと、出てきて足跡が付かなかったら探しようがありません。そのような赤ちゃんスッポンはいなかったことを祈るだけです。

確実に言えることは、今日救出された3匹はとても強運を持っているということです。まずは足跡を残してくれたこと(泥の中から出てきて避難しようとしたこと)、私がその足跡を見て、「もしかしたら・・・」と思ったこと、そしてダメ元で掘り起こしてみたら最初の1匹がそこにいたということ(この1匹目がいなかったらあとの2匹の救出もなかった)、帰宅してからもう一度行ってみようと思ったことでさらに2匹が救出されたこと、夜になったら獣が嗅ぎ回ることが確実な状況で幸運にも日没前に救出できたこと、その日は熱中症アラートが出たとても暑い日で、もう1日たりとも猶予がない厳しい状況だった中で最短で救出できたことなど、偶然にも複数の幸運が重なっていたからです。

私は瀕死の状態のスッポンが目の前にいる限り、看過することはできません。だから少し安全な大きさになるまで一時的に命を預かって、そのあと天敵の少ないところにリリースするという活動は続けて行きます。私が保護している赤ちゃんスッポンはそのままだったら生存率0%はほぼ確実です。その辺りの年間を通じた環境のことを知悉しているからです。

このスッポンたちはこのような経過を辿って今生きていることをとてもありがたいことだとわかっているのかもしれないと思うことがあります(単なる親バカですが)。3匹とも他の赤ちゃんスッポンたちよりかなり慣れてくれています(懐いているというには爬虫類ですので限界があると思うので慣れているという表現をあえて使います)。頭を指でツンツンしても逃げませんし、空腹になったら他の赤ちゃんスッポンよりも積極的に私にいちばん近いところにポジショニングして身を乗り出すようにじっと私の方を見ています。この強運を“持っている”スッポンたちに少しでいいから肖れたらと思う今日この頃。

水がなくなった用水路の泥の中から助け出された幸運な3匹の赤ちゃんスッポンの詳細はこちら →

スッポンの一時的保護とリリースは自分にとって何の得があるのか

餌代もバカにならないし、高い頻度の水換えも大変だし、旅行にも行けないのに、保護した多数のWCの赤ちゃんスッポンの飼育をなぜやっているのでしょうか。物好きにも程があると自分でも思います。でも、放置したら明日にはもう生きていないだろうという状況にあるスッポンや魚が目の前にいるのに見過ごすわけにはいきません。なので、できるだけ救出して魚は基本リリース、一部飼育しています。赤ちゃんスッポンの場合は保護してリリースはせずしばらく命を預かります。甲長が2倍以上になった頃に水のある天敵の少ない場所にリリースします。リリースせずそのまま飼育する個体もいます(保護したWC種の中で野生では生きていけないと思われる病弱な子やハンディのある子は飼育します。また、冒頭で紹介した卵から生まれたCH種で現在生きている5匹は一度も野生下で生活したことがなく、野生下で天敵から逃れて生きていくのはほぼ不可能と思われるため、たとえ親がいた場所であってもリリースはしないつもりです)。何も収入はない完全なボランティアですが、大変なことばかりでもありません。それはスッポンの幼体からの自分なりの飼育法が確立できることと、個体数nを大きくすることによって(個体数が多くなることによって)いろいろな知見が得られ、数少ない飼育個体による偏った情報ではなく、たくさんの個体数から一般性を導き出すことができることです(多くの人は1匹〜数匹ではないでしょうか)。nが多いとたまたまそうだったというようなことがなくなって、より信頼性が増すからです。それと私自身の知的好奇心を満たすこと、安らぎをもらえること、毎日の水換えなどの作業によって私自身の健康を維持する効果なども挙げられます。

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